ショコラ セレクション(クッキー&ショコラ)で、クッキーの隣に並べられた5粒のショコラ。これらは鈴木グランシェフパティシエ監修のもと、日々ショコラに向き合うショコラティエとパティシエの手によって作られました。鈴木からどんなアドバイスがあったのか、クッキーが主力のスイーツブランドでショコラ作りに励むとはどういうことか。今年の新作ショコラ誕生までの裏側をお届けいたします。
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写真右:中村 真也(なかむら しんや)
2022年、アトリエうかいに入社。かつて銀座うかい亭でパティシエとして活躍した後、どうしてもショコラを学びたいという思いからショコラトリーで経験を積む。独立を視野に入れていたところ、うかい亭時代の先輩から声を掛けられ、アトリエうかいでのショコラ作りに携わる。
写真左:中野 和也(なかの かずや)
2023年、アトリエうかいに入社。地元企業で料理人としてキャリアをスタート。その後、お菓子作りの魅力に惹かれてパティシエへと転身。前職のパティスリーで中村と出会い、アトリエうかいで働く中村を訪問したことがきっかけとなり、自身もアトリエうかいの現場に加わる。
ショコラ専門店じゃないからこそ
工夫のしがいがある
Q:今回の新作ショコラはどのように作られましたか?
中野:自分が「カシスオレンジ」「モカコーヒー」「プラリネセザム」を作りました。何種類か作ったうち、鈴木シェフにお見せして、この3つに絞られました。
中村:僕は「キャラメル チュアオカカオダーク」と「アップルクランチ」を。中野さんが試作を先に始めていたので、なるべく彼が作る味とかぶらないようにしました。
Q:作るうえでのポイントはありますか?
中村:常温での取り扱いができて、日持ちもして、なおかつアトリエうかいらしさを備えたハイクオリティなものを考えなければいけません。
まず思いついたのがキャラメルを使ったショコラ。だけど、ボンボンショコラ(※)=ガナッシュ(チョコレートと生クリームを混ぜ合わせたもの)という思いがあって、僕が作ったふたつは「キャラメルだけど、なるべくガナッシュに近づけたい」というところにこだわりました。
中野:ガナッシュが作れないというところで、中村さんと同じようにすごく悩みました。自分の場合は、カシス、モカ、セザム、すべてにプラリネ(ナッツのペースト)を使っています。プラリネだけだと口当たりが硬くなりやすいので、口に入れた瞬間に、溶けるようななめらかさを出す工夫が大変でした。
プラリネも濃いものと薄いものを掛け合わせて、シャリっとした食感、甘さ、風味のちょうどいいバランスを、それぞれのショコラの特徴に合わせています。
中村:僕が一番心がけたのは、歯にくっつかないキャラメルを作ること。煮詰める温度や材料の配合を微妙に変えて、何度も試作を繰り返しました。
ガナッシュが作りたかったけど「ガナッシュを作っていいよ」と言われていたら、きっとここまで考えたり悩んだりしなかったと思います。その制約が自分の中の引き出しを増やしたし、とてもいい勉強にもなりました。
※ボンボンショコラ:チョコレートを使った高級菓子の一種で、中に異なる風味や食感を持つ詰め物がされています。外側はシェルと呼ばれるチョコレートのコーティングが施され、より薄く艶やかであることが望ましいとされています。
ショコラの組み合わせも
レストランのコース料理のように
Q:鈴木シェフのアドバイスで、特に記憶に残っていることはありますか?
中野:商品化に辿り着くまで、鈴木シェフと何度もやり取りしましたが、あまり具体的に「こうしたほうがいいよ」というのはなくて、どちらかというと自分で考えさせるようなアドバイスが多かった気がします。自分で考えて、作って、成長してくれよというメッセージが含まれている、と勝手にそう受け止めています(笑)。
中村:今回は、それぞれで考えて、それぞれに提案したなかで、味のバランスをみながら選び抜かれた5種類で構成しました。ただ、鈴木シェフからは「来年はレストランに出てくるコースをイメージして、一つひとつ、順番に食べても飽きない構成をもっと2人で話し合って作ったら、今年と違う面白いものができるのでは?」と言われました。その発想がレストラン出身のパティシエならではで、アトリエうかいらしいなと腹落ちしました。
来年は二人でもっと話し合いながら、足並みをそろえて作っていこうと思います!
Q:最後に、将来の夢や目標があれば教えてください。
中村:もともと海外のショコラティエに憧れて、パティシエからショコラティエになりました。今はスパイスや花を使ったショコラが流行っているけど、自分が好きなフルーツや柑橘を使ったショコラをぶれずにもっと極めていきたいなと思います。
鈴木シェフや先輩パティシエがお菓子の勉強や食べ歩きを怠っていない姿をみると、お菓子への情熱や味に関して、もう一段ギアを上げないと、と気が引き締まる思いでいます。
今は、同業者から見られても恥ずかしくない仕事をしていきたいし、同業者に認められるようなショコラティエになりたいと思っています。
中野:自分は食べるのが好きで、作るのはなしだと思っていたのですが、料理人からパティシエに転身し、気づいたらショコラにまで手を広げていました(笑)。お菓子作りも最初はうまくいかなかったんですけど、回数を重ねるごとにうまくできるようになっていく。これからもジャンルを問わず、いろいろなものに挑戦していきたいなと思っています。
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