アトリエうかいのクッキー缶には、グランシェフパティシエ鈴木の特別な思い入れがあります。
幼少期、母親が缶のふたを開ける際にテープをきれいにはがし、クッキーを取り分けると再びそのテープを巻き、湿気ないように封をしていた光景を目の当たりにしていました。クッキーを慈しむような母親の姿は印象的で、そこには今の時代にも残すべき大切なものがある気がある、と鈴木は感じていました。そんなこともあり、クッキーの詰め合わせを商品化するにあたっては“缶入りのクッキー”を作りたいという思いがありました。
2016年発売の「フールセック・サブレ缶」は、和の素材を使用していることから、パッケージに日本人らしい“おもてなしの心”を表現したいと考えていました。しかしなかなかデザインが決まらず、手探り状態が続くことに…。そんな時、うかいの系列和食店のあちらこちらにあしらわれている紋様が目に留まりました。
ひょうたんに網代、青海波に鉄線花…。
それらは、古くから日本で用いられてきた幸を願う吉祥紋様でした。
「こんなところにもおもてなしの心が息づいていたのか」と気づかされ、缶のデザインに取り入れることに。時を超えて愛される縁起のよい紋様を描いた缶は、ハレの日の贈り物にもぴったりのパッケージとなりました。
これらの缶が食べ終えたあとにもどこかで誰かの大切なものをしまう箱などとして使われることがあるならば、私たちにとって最上の喜びです。