のどかな風景から望む、養老山地の穏やかな丘陵。
山肌を覆うように広がる、一面のみかん畑。
ここは、岐阜県海津市の南濃町。
アトリエうかいのグランシェフパティシエ・鈴木滋夫の生まれ故郷です。
岐阜県で唯一のみかん産地でもあり、「南濃みかん」が市の特産品として知られています。
南濃町は、みかんを育む場所としては日本の北限とされる土地。
気候の影響か、甘味だけでなく香りや程よい酸味のあるみかんが収穫されています。
その特有の魅力に惹かれ、世の中に広く伝えたいという思いから鈴木は2年前から南濃みかんを使用したショコラ作りに取り組んでいます。
初めて商品化に挑戦したのが一昨年。
昨年は海津市のふるさと納税品として取り扱われるようになり、年々味わいのクオリティを上げながらショコラを通して南濃みかんの美味しさを表現し続けてきました。
第3弾となる今年は、内容も装いも一新。
今年は、コロンビア産のカカオと南濃みかんのマリアージュを楽しむチョコレートクッキーとボンボンの詰め合わせ「南濃みかんショコラセレクション」を作り上げました。
南濃みかんという素材にあらゆる方向からスポットライトを当て、香り高いカカオやクッキーと掛け合わせながら多彩な手法でその特長を表現したショコラアソートです。
パッケージには全面にみかんのイラストを艶やかに施すことで、鈴木の南濃みかんへの想いを色濃く映しています。
特長は、“酸”と“香り”にあり。
今回のショコラに用いたコンフィチュールやパート・ド・フリュイには、南濃産の完熟みかんに加え、本来は栽培する過程で廃棄されてしまう摘果みかん(青みかん)を取り入れています。
コンフィチュールやパート・ド・フリュイを作る工程には、味わいのバランスを保ったり、固めたりするために酸味のある素材が必要不可欠です。
通常、酸味の少ない素材を用いる場合はレモン果汁やクエン酸などを加えます。
南濃みかんのように元々酸味を持つ果実や摘果みかんを使用する場合はその酸味だけで成り立つため、みかんそのものの味わいをダイレクトに表現することが可能に。
また、酸味に加えてのもう一つの南濃みかんの大きな特長が皮に秘められた「香り」です。
他産地の温州みかんと比べて、南濃みかんは外皮が少し厚めなのがポイント。
みかんの香り成分は皮に含まれるため、しっかりと厚みがあるだけに香りも非常に豊かです。
今回はその芳香を存分に生かすため、摘果みかんは皮をすりおろしてパート・ド・フリュイに取り入れました。
完熟みかんは搾った果汁に皮を加えてマーマレードのように炊き上げて皮の香りや微かな苦味も風味として含んだベースを作り、それを裏ごししたものをジャムやパート・ド・フリュイに使用しています。
南濃みかんの素晴らしさを余すことなくお伝えするためにこうしてさまざまな趣向を凝らすことで、特有の風味を楽しめる珠玉のショコラが完成しました。
味わい豊かな4種のクッキー&ボンボン。
南濃みかんの魅力を鮮やかに伝える、クッキーショコラとボンボンショコラ。
それぞれにこだわりの詰まった4種の味わいを、ここで1つずつご紹介させてください。
●摘果みかんのショコラ
爽やかな酸味と香りを持つ摘果みかんのパート・ド・フリュイと自家製みかんジャムを練り込んだチョコレートを2層に重ね、ダークチョコレートで包んだショコラ。
柑橘とカカオの風味が深い余韻を生み出しています。
摘果みかんを活用したサステナブルな一品です。
●完熟みかんのショコラ
完熟みかん&貴腐ワインのパート・ド・フリュイと自家製みかんジャムを練り込んだチョコレートを2層に重ね、ミルクチョコレートで包みました。マイルドでコクのある味わいが魅力です。
●みかんジャムをのせたアーモンドクッキー・ダークチョコがけ
自家製みかんジャムをのせたアーモンドクッキーを、ダークチョコレートでコーティングしました。
しっとりとした食感のクッキーと、貴腐ワインが香るみかんジャム、チョコレートのなめらかな口どけが一体に。
●みかんクッキー・みかんジャムサンド ミルクチョコがけ
南濃みかんのクラフトジンで香りをつけた爽やかな自家製みかんジャムを、みかんクッキーでサンドしミルクチョコで包みました。
ほんのり感じる酸味が、マイルドなミルクチョコレートと好相性。
素材に用いた「南濃みかんGIN」と、ジンの商品企画を担当された海津市の水谷酒店 店主・水谷昌貴さん。ワイン造りの工程で出た南濃みかんの搾りかすを再利用して作られた一本で、「南濃みかんの魅力をもっと知ってもらいたい」という水谷さんの思いが込められています。ショコラに取り入れることで、南濃の地に根ざす豊かなテロワールを表現しました。
今年度もふるさと納税の返礼品に登場。
2023年10月某日、完成した「南濃みかんショコラセレクション」を携えて海津市役所を訪ねた鈴木。
今年度も海津市ふるさと納税の返礼品として当商品を販売するため、横川真澄 海津市長や市役所の皆様にショコラをご覧いただきました。
「このみかんジャムをのせたダークチョコがけクッキーには、幼い時に眺めたみかん畑が連なる“みかんロード”の情景を映しました」
鈴木の一言に、横川市長や皆様が缶の中を注目。
見た目とあわせて、ふんわり漂うカカオとみかんの香りにも驚きの声をあげてくださいました。
最後は、市役所の方々の優しさに甘えて記念撮影。
(横川市長・企画財政課の皆様、ありがとうございました!)
ショコラに映す、ふるさとへの想い。
幼少期を南濃町で過ごした鈴木は、収穫時期になるとご近所さんと一緒に「みかんちぎり(みかん収穫)」を手伝ったり、夏には摘果みかんを絞ったジュースを飲んだりして過ごしていました。
鈴木にとって、幼い頃から常にみかんは身近なものとして存在していたのです。
一方で、昨今の海津市のみかん農業に従事されている方々は、次世代の担い手不足や栽培面積の減少などの課題を抱えています。
「僕も田舎に帰る機会が少なくなっていて、あまり気に留めていなかったんですけど…。
言われてみると確かにみかん山が減ってるな、と気が付いて」と話す、鈴木。
今回の「南濃みかんショコラセレクション」には、“失われつつある里山の景色や故郷のみかん農業を守ることに少しでも繋がってほしい”という鈴木の願いが込められています。
お菓子の素材として魅力があり、自身が本当に美味しいと思うものを世の中にお伝えしていく。
それは鈴木がお菓子作りのプロとしてとても大切にしていることです。
その中で、今回のショコラでの摘果みかんの活用のようにできるところからサステナブルな取り組みに関わっていく必要性も作り手の責任として感じています。
ショコラを通して南濃みかんの美味しさに触れると共に、里山に広がるみかん畑の情景にも思いを馳せていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。
「南濃みかんショコラセレクション」は、オンラインショップやアトリエうかい各店で販売している他、今後は各地のバレンタイン催事会場でも続々と販売予定です。
ぜひこの機会にお楽しみいただけたら幸いです!