ヴェネチアは、華のある街。舞台にもなる。誰もが一歩足を踏み入れるだけで、何かを演じている様な錯覚に陥ってしまう。荘厳な寺院、豪華な宮殿、どこからともなく聞こえてくる鐘楼の音、ナポレオンが世界一美しいと言ったサン・マルコ広場、浮かぶゴンドラ、迷路のようなロマンチックな路地、華やかなガラスアクセサリーや仮面の店、レストランなどが多彩にセットされている。まるで絢爛華麗なオペラ劇場で、全員が酔いしれているようだ。祝祭都市ヴェネチアと言われる所以であり、いつもどこかで祝宴が行われていても不思議では無い。 華やかで上品なヴェネチアン・グラスの器たちは、食卓で一層雰囲気を盛り上げる。豪華な祝宴を、ひときわ輝かせ、ヴェネチアン・グラスの名声を一層世界に高めたに違いない。そして往時の世界を今ここに伝えている。 箱根ガラスの森美術館 館長 岩田正崔 (‐華麗なるヴェネチアン・グラス‐ 祝宴の器展より一部抜粋)
ヴェネチアン・グラスとは 紺碧のアドリア海に面した北イタリアの水の都ヴェネチア。ヴェネチアン・グラスは、古代ローマ時代のローマン・グラスにその起源を発するともいわれ、当時すでにイタリア半島全域には多くのガラス工房が作られていました。ガラス生産の中心地は、1291年の「ガラス製造業者および工人・助手、家族等のすべてをムラーノ島に移住させ、島外に脱出する者には死罪を課す」というヴェネチア共和国の強力な保護政策により、ヴェネチアの本土であるリアルト島から隣のムラーノ島へと移ります。そして今日に至るまで、ムラーノ島はヴェネチアン・グラスの中心地であり、ムラーノ島の人々は、ヴェネチアン・グラスと運命を共にしてきました。