香りは古来においては神への捧げものとして、中世からルネサンスにかけては病気から身を守る薬や魔除けとして、そして現代ではファッションとして、時代とともにその役割を変えていきました。そして、香りは時代の移り変わりとともに、天然石や陶磁器、ガラスといった様々な香水瓶という「衣装」に姿を託し、往時の栄華を今に伝えています。 本展では、3000年以上の時を経て人と香りが歩んだ軌跡をめぐります。時代を彩る3人の貴婦人たちが愛した香りとともに、水晶や瑪瑙などで制作された香水瓶や、神話や愛などの寓意を込めた香水瓶、ファッションとして香りのイメージをデザインした19世紀末以降の香水瓶など、様々な香りの器の世界をご紹介いたします。ぜひ、往時の人々の想いが込められた「香りの装い」をお楽しみください。 2024年7月 主催者(図録/2024年度 特別企画展 香りの装い-香水瓶をめぐる軌跡-より一部抜粋) 開催期間:2024年7月19日~2025年1月13日
ヴェネチアン・グラスとは 紺碧のアドリア海に面した北イタリアの水の都ヴェネチア。ヴェネチアン・グラスは、古代ローマ時代のローマン・グラスにその起源を発するともいわれ、当時すでにイタリア半島全域には多くのガラス工房が作られていました。ガラス生産の中心地は、1291年の「ガラス製造業者および工人・助手、家族等のすべてをムラーノ島に移住させ、島外に脱出する者には死罪を課す」というヴェネチア共和国の強力な保護政策により、ヴェネチアの本土であるリアルト島から隣のムラーノ島へと移ります。そして今日に至るまで、ムラーノ島はヴェネチアン・グラスの中心地であり、ムラーノ島の人々は、ヴェネチアン・グラスと運命を共にしてきました。