― 荒唐無稽なるが故に我それを信ず ― ローマ帝国時代のキリスト教の神学者で哲学者であったテルトゥリアヌス(160-220年頃)の言葉です。 箱根ガラスの森美術館はヨーロッパ貴族の館、特にヴェネチアのイメージを意識して形にした、いわば非現実的な世界、あるいは空想的な世界、言い換えれば荒唐無稽と言う事も出来るでしょう。この荒唐無稽とも言える空間で、お客様には思い切り心を遊ばせて頂きたい。日常の多忙な世界から解放された心の安らぎを得て、新たなインスピレーションが湧いてくるという暗黙の哲学的メッセージを、このラテン語は語っています。日常を一瞬忘れて心を遊ばせることで、次の自分が見え、「人生はこうあるべきではないか」というようなある悟りを得る。そういう事を気付かせてくれる発見や喜びがこの美術館にはあります。 箱根ガラスの森美術館 館長 岩田正崔 (図録/Ukai 箱根ガラスの森美術館 水の都の炎の奇跡 収蔵作品集より一部抜粋)
ヴェネチアン・グラスとは 紺碧のアドリア海に面した北イタリアの水の都ヴェネチア。ヴェネチアン・グラスは、古代ローマ時代のローマン・グラスにその起源を発するともいわれ、当時すでにイタリア半島全域には多くのガラス工房が作られていました。ガラス生産の中心地は、1291年の「ガラス製造業者および工人・助手、家族等のすべてをムラーノ島に移住させ、島外に脱出する者には死罪を課す」というヴェネチア共和国の強力な保護政策により、ヴェネチアの本土であるリアルト島から隣のムラーノ島へと移ります。そして今日に至るまで、ムラーノ島はヴェネチアン・グラスの中心地であり、ムラーノ島の人々は、ヴェネチアン・グラスと運命を共にしてきました。