ヴェネチアン・グラスの歴史や魅力を語る時に必ず登場するのが、ヴェネチアにあるムラーノ島です。中でも700年の伝統を誇るバロヴィエール一族は、ひと際光り輝いています。彼らは時代の変化に敏感に反応し、常に先導者として華麗なヴェネチアン・グラスの世界を演出してきました。
人々が思い焦がれながら、今まで成しえなかった新しいヴェネチアン・グラスの作品を創り出していくために、彼らがどれほどの執念を燃やし、苦しみ、挑戦し、そして新しいガラス芸術の世界の先駆になっていったのか…
バロヴィエール一族の数々のドラマを思い浮かべながら、彼らがヴェネチアン・グラスにかけた美の追求に、夢とロマンを感じて頂ければ幸いです。
箱根ガラスの森美術館 館長 岩田正崔
(図録/~奇跡のガラスを生んだ~華麗なるバロヴィエール一族より一部抜粋)
ヴェネチアン・グラスとは
紺碧のアドリア海に面した北イタリアの水の都ヴェネチア。ヴェネチアン・グラスは、古代ローマ時代のローマン・グラスにその起源を発するともいわれ、当時すでにイタリア半島全域には多くのガラス工房が作られていました。ガラス生産の中心地は、1291年の「ガラス製造業者および工人・助手、家族等のすべてをムラーノ島に移住させ、島外に脱出する者には死罪を課す」というヴェネチア共和国の強力な保護政策により、ヴェネチアの本土であるリアルト島から隣のムラーノ島へと移ります。そして今日に至るまで、ムラーノ島はヴェネチアン・グラスの中心地であり、ムラーノ島の人々は、ヴェネチアン・グラスと運命を共にしてきました。