自然が生み出す神秘的な色彩と輝きは、いつの時代も私たちを虜にし、職人たちの創作の原動力となってきました。本展ではガラスと貝細工という異なる工芸作品を通して「きらめきと色彩の神秘」に迫ります。 長い年月を経て、虹色のきらめきを放つように変化を遂げた古代ガラス。その古代ガラスへの憧れから生み出された艶やかな輝きのラスター彩ガラス。瑪瑙やオパールなど、宝石のもつ魅惑の色彩に挑戦したヴェネチアン・グラス。そして貝が生み出す真珠層のきらめきを生かした螺鈿細工など、古代から現代に至る約90点の作品をご紹介し、職人たちが挑んだ色彩ときらめきの軌跡をたどります。ぜひ、見る場所や角度を変えながら、神秘の光彩を心ゆくまでご鑑賞ください。 2025年7月 主催者(図録/2025年度 特別企画展 軌跡のきらめき-神秘の光彩、ガラスと貝細工-より一部抜粋) 開催期間:2025年7月18日~2026年1月12日
ヴェネチアン・グラスとは 紺碧のアドリア海に面した北イタリアの水の都ヴェネチア。ヴェネチアン・グラスは、古代ローマ時代のローマン・グラスにその起源を発するともいわれ、当時すでにイタリア半島全域には多くのガラス工房が作られていました。ガラス生産の中心地は、1291年の「ガラス製造業者および工人・助手、家族等のすべてをムラーノ島に移住させ、島外に脱出する者には死罪を課す」というヴェネチア共和国の強力な保護政策により、ヴェネチアの本土であるリアルト島から隣のムラーノ島へと移ります。そして今日に至るまで、ムラーノ島はヴェネチアン・グラスの中心地であり、ムラーノ島の人々は、ヴェネチアン・グラスと運命を共にしてきました。